「一番上手な職人になりたい」

interview

「一番上手な職人になりたい」

PROFILE

小林建設株式会社(新潟県北蒲原郡聖籠町/建設業)

新潟市の北に隣接する聖籠町。地域密着の工務店として一般建築の設計施工とリフォーム工事を手がける小林建設株式会社は、代表を含めて8名の小さな所帯です。その現場を支えているのは、インドネシアから来た5名の仲間たち。日本人社員の高齢化を背景に2015年から外国人材の受入れを始め、10年余りが経ちました。技能実習生として入社したデエデエ ヘルマワンさんは、今年ついに特定技能2号に合格。班長を経て、いまでは職長として現場を任される存在になっています。「一番上手な職人になりたい」と語るヘルマワンさんと、採用と教育に力を注いできた代表の小林吉春さんに、これまでの歩みを伺いました。

人手不足と高齢化。受入れは「必要に迫られて」から始まった

建設業の担い手不足は、いまや全国共通の課題です。若年層の入職が細る一方でベテランの高齢化が進み、技能をどう次の世代へ渡していくかという問いが、規模を問わずすべての事業者に突きつけられています。とりわけ地域の工務店にとって、その影響は直接的です。少人数で現場を回している以上、一人が抜ければ工程そのものが揺らぎます。

小林建設が外国人材の受入れを始めたのは2015年のことでした。きっかけは、まさにこの人手不足と、日本人社員の高齢化です。

「若い担い手をどう確保するか。悩んだ末にたどり着いたのが、外国人材の採用でした」(小林さん)

小林さん自身、経営者であると同時に現役の職人です。自ら現場の最前線に立ちながら、採用と教育の両方に力を注いできました。制度や書類の話に留まらず、道具の持ち方から段取りまで、日々の仕事のなかで直接伝えられる。それが、この規模の会社ならではの強みでもあります。

教えるのは「先輩の通訳」から。社外とのつながりも支えに

入社直後、最初の壁になるのは言葉です。小林建設では、先に来日した先輩が作業指示を通訳しながら伝えます。手順をひとつずつ覚え、できることが増えるにつれて任せる範囲を広げていく。特別な仕組みがあるわけではありません。現場で手を動かしながら、地道に積み上げていくやり方です。

この「先輩が教える」構造は、受入れを継続してきた会社にしか生まれないものでもあります。最初の一人を迎えた時点では通訳役になれる社員がいないため、初期の負担は決して小さくありません。裏を返せば、その時期を越えた会社では、後から入る人材の立ち上がりが目に見えて早くなります。小林建設が10年をかけて手にしたのは、労働力そのものよりも、この「教えられる体制」だったのかもしれません。

もうひとつ、小林建設が大切にしているのが社外とのつながりです。他社で働く外国人従業員との交流や、取引先が主催するイベントへの参加を通じて、同じ立場の仲間と話せる場をつくってきました。

「仕事以外で相談できる相手がいることは、本人たちの安心につながっていると感じます」(小林さん)

職場と住まいの往復だけで日々が完結してしまうと、悩みを抱えたときの逃げ場がなくなります。会社の外に相談相手がいるかどうかは、定着を左右する要素のひとつです。地域の企業同士が横でつながることには、こうした意味もあります。

先輩・後輩ができ、技能が受け継がれていく

受入れを続けたことの効果は、職場の関係性にはっきりと表れました。

「先輩・後輩ができたことで、それぞれのモチベーションにつながっています」(小林さん)

教わる側には目標にできる先輩がいて、教える側には後輩に見られているという自覚が生まれます。職長レベルまで育てば現場を任せられるようになり、さらに後輩の育成も担ってもらえる。人が育つほど、次の人が育ちやすくなる。技能伝承の循環が、社内に確かに生まれつつあります。

[ヘルマワンさん]言葉と仕事のやり方に、毎日ノートで向き合った

「苦労したことは、言葉と仕事のやり方です」

ヘルマワンさんは来日当初をそう振り返ります。先輩の指示が分からない。安全ルールも難しい。建設現場では、指示がひとつ伝わらないだけで作業が止まり、ときには危険にも直結します。それでも、立ち止まりはしませんでした。

「毎日、新しい言葉をノートに書きました。分からないことは先輩に質問して、家では動画を見て勉強しました」

現場で聞いた言葉を書き留め、その日のうちに確かめ、家に帰ってからも学ぶ。派手さのない繰り返しですが、これを何年も続けられる人は多くありません。積み重ねの結果、いまでは日本語で会話ができ、仕事も遅れることなくこなせるようになりました。

[ヘルマワンさん]目標は「会社で一番上手な職人」

2018年9月の入社から約8年。技能実習1号から2号、3号へと進み、特定活動、特定技能1号を経て、今年ついに特定技能2号に合格しました。制度の階段をひとつずつ上がってきたことになりますが、本人の目線の先は、さらに上にあります。

「目標は、会社で一番上手な職人になることです。綺麗に、早く、安全に仕事をしたい。そのために、図面の読み方と正しいやり方を社長から勉強したいです」

在留資格の取得ではなく、職人としての腕を目標に据えている――この一言に、ヘルマワンさんがこの会社で過ごしてきた時間が表れているように思えます。

挑戦したいことを尋ねると、迷いなくこう答えました。

「日本語を勉強して資格を取りたいです。会社のために役に立つ社員になりたいです」

【解説】技能実習から特定技能2号へ ― ヘルマワンさんが歩んだ道のり

特定技能2号は、特定技能1号の上位に位置づけられる在留資格です。1号との最大の違いは、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も認められる点にあります。長期にわたって日本で働き、生活の基盤を築いていくことができる資格です。

建設分野では、この2号への移行にあたって試験合格に加え、班長としての実務経験が求められます。つまり、指示を受けて作業する立場から、現場で人をまとめる立場へと役割が変わっていることが、資格の要件そのものになっているということです。

ヘルマワンさんは、技能実習で来日してから約8年をかけてこの道のりを歩みました。長い時間に見えますが、その間ずっと同じ会社で働き続けてきたからこそ、班長・職長としての経験を積むことができたとも言えます。制度が用意した階段を上るには、上らせる側の会社に、その意思と時間が必要です。

班長から職長へ。特定技能2号を見据えた育成方針

小林建設の育成方針は明確です。受け入れた人材には、特定技能2号を目指してもらう。そのために、班長から職長へとステップを踏むキャリアパスを描いています。

前述のとおり、特定技能2号の要件には班長・職長としての実務経験が求められます。だからこそ、日々の現場で責任のあるポジションを任せていくことが、そのまま資格取得への道筋になる。育成とキャリア形成が制度と一本の線でつながっているのが、小林建設の考え方です。

外国人材の受入れを「一時的な人手の補充」で終わらせるか、「10年先の担い手づくり」と位置づけるか。同じ受入れでも、この違いは数年後の姿に大きく効いてきます。ヘルマワンさんが職長として現場を任されている事実が、後者を選んだ場合に何が起こるかを示しています。

これから受入れを検討する県内企業へ

10年余りの経験を踏まえ、小林さんはこれから受入れを考える企業に向けて2つの点を挙げます。

「可能であれば、現地へ赴いて採用する人材を実際に見ること。そして採用後は、外国人材の中でリーダーシップをとれる人物を育てることが重要だと思います」

書類や面接の記録だけでは分からないことがあります。現地に足を運び、本人と家族の生活や送出機関の姿勢を自分の目で確かめることは、採用後のミスマッチを減らす最も確実な方法のひとつです。

そしてもうひとつ、リーダー役を育てるという視点。受け入れた人材の中に、通訳ができ、後輩をまとめられる人物が育てば、会社の負担は目に見えて軽くなります。2人目、3人目を迎えるときの立ち上がりも早くなる。最初の一人にどれだけ手をかけられるかが、その後を左右します。

ヘルマワンさんという職長が育ったことが、小林さんの言葉の何よりの裏づけになっています。

人手不足への対応として始まった受入れは、10年を経て、会社の次の10年を担う人材づくりへと形を変えつつあります。同じ課題を抱える県内の企業にとって、小林建設の歩みは決して特別なものではないはずです。

COMPANY PROFILE

小林建設 株式会社

エリア

新潟県北蒲原郡聖籠町大字蓮野2881-1

業種

建設業(一般建築設計施工・リフォーム工事

従業員数

8名(代表1名・社員6名・パート1名)

事業内容

一般建築の設計施工、リフォーム工事(増改築、外壁・屋根・サッシ・シャッターの修繕・交換)。地域密着型の工務店。

外国人材の受入

5名(技能実習3名/特定技能1号1名・2号1名) 出身国:インドネシア 受入開始:2015年 担当業務:大工工事

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よくあるご質問

入国・受入準備・生活について

在留資格(特定技能)の申請は、受け入れ企業または行政書士が行います。申請書類の準備・出入国在留管理庁への申請・審査対応など、手続きは複雑なため、専門の行政書士への委託が一般的です。BNGパートナーズでは、行政書士との連携を含めた手続きサポートを提供しています。

インドネシア人材の多くはイスラム教徒であり、豚肉・アルコールを含む食品を口にしないハラール対応が必要です。社員食堂がある場合はメニューの確認・代替食の用意が必要となります。また、1日5回の礼拝(サラート)のための時間・場所の確保も重要です。多くの企業では、休憩室の一角を礼拝スペースとして提供しています。これらの配慮は、外国人材の定着率に直結する重要な要素です。

住居の手配は受け入れ企業が行うことが一般的です。社宅・アパートの提供、または家賃補助という形が多く見られます。来日直後は生活立ち上げのサポートが特に重要で、最寄りのスーパー・病院・銀行・交通機関の案内など、生活環境の情報提供も定着率に影響します。BNGパートナーズでは、受け入れ準備のチェックリストを提供しています。

採用までの流れや受入体制、入国前教育などについて、事業内で紹介する情報やイベントを通じて確認できます。

制度について

主な要件として、①特定技能外国人と同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払うこと、②社会保険・労働保険への加入、③支援計画の策定(登録支援機関への委託も可)、④欠格事由(過去5年以内の労働関係法令違反等)に該当しないこと、などが挙げられます。中小企業でも要件を満たせば受け入れは可能です。詳細はお問い合わせください。

在留資格の申請・審査・入国手続きなどを含めると、採用決定から就業開始まで一般的に3〜6か月程度かかります。ただし、DMI(インドネシア教習所)経由の候補者は渡航前に技能・日本語・就労マナーを習得しているため、来日後の立ち上がり期間が短縮される傾向があります。スケジュールは採用時期や在留資格の審査状況によって変動しますので、早めの計画と準備をお勧めします。

まずは本サイトの企業インタビュー記事をご覧いただき、自社と同じ業種・規模の企業がどのように取り組んでいるかを確認することをお勧めします。その上で、セミナーへの参加やお問い合わせフォームからの無料相談をご活用ください。「自社が対象業種に該当するか」「費用感はどのくらいか」「手続きはどこに依頼すればよいか」といった基本的な疑問から、BNGパートナーズの担当者が丁寧にお答えします。

2024年3月時点で、特定技能の対象は16分野です。介護・ビルクリーニング・素形材・産業機械・電気電子・建設・造船・自動車整備・航空・宿泊・農業・漁業・飲食料品製造・外食業・自動車運送業・鉄道が対象となっています。本事業では、新潟県の主要産業である運輸交通・製造・農業・宿泊・建設の5業種を中心に取り組みを進めています。

技能実習は「国際貢献・技術移転」を目的とした制度で、原則として転職が認められず、受け入れ企業との雇用契約が前提です。一方、特定技能は「即戦力となる外国人材の確保」を目的として2019年に創設された制度で、一定の要件のもとで転職が可能です。また、特定技能は日本語能力試験と技能評価試験の合格が入国の条件となるため、来日時点で一定の語学力と実務能力が担保されています。技能実習からのキャリアアップ手段としても活用されています。

人手不足が認められる産業分野において、 一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れるための在留資格です。

定着・トラブル対応について

外国人材の定着には、入社後のキャリアパスと昇給の見通しを明確に示すことが重要です。特定技能1号は最長5年の在留期間ですが、特定技能2号への移行(建設・造船分野等)や、永住権取得につながるルートもあります。本事業の取材事例では、来日5年目に職長として現場を取り仕切るまでに成長した事例や、技能検定取得を目標に日本人スタッフと並んでキャリアアップに取り組む事例を紹介しています。「長く働いてもらうために何ができるか」を採用前から考えることが、定着率向上の鍵です。

労働条件・生活上のトラブル・在留資格に関する問題など、受け入れ後に生じる様々な課題については、BNGパートナーズの相談窓口が対応します。また、新潟県の外国人相談センター・出入国在留管理庁の相談窓口・法務省の外国人在留総合インフォメーションセンターなど、公的な相談機関も活用できます。問題が深刻化する前に早めにご相談ください。

外国人材の受け入れ前に、既存スタッフへの丁寧な説明と意識醸成が重要です。「なぜ外国人材を受け入れるのか」「どのような人が来るのか」「どのようにサポートすればよいか」を事前に共有することで、受け入れ後のトラブルを防ぐことができます。本事業では、社内説明会の進め方や、多文化共生の職場づくりに関する情報も提供しています。

特定技能外国人の離職・帰国は、受け入れ体制の整備によって大きく左右されます。住居・食事・生活環境への配慮、職場での人間関係の構築、キャリアアップの見通しの提示——これらが整っている企業では定着率が高い傾向があります。本事業の取材事例では、来日後3年以上定着している事例も複数あります。万が一離職が生じた場合の対応についても、BNGパートナーズがサポートします。

言語の壁への対応として、多言語マニュアルの整備・翻訳アプリの活用・やさしい日本語(平易な表現)での業務指示などが有効です。本事業の取材事例では、業務手順をイラスト・動画で説明するDXマニュアルを整備した宿泊施設や、インドネシア語版の安全作業手順書を作成した建設会社の事例を紹介しています。また、来日後も継続的な日本語学習を支援することが、長期的なコミュニケーション改善につながります。

外国人材の活用を検討している企業、すでに受け入れている企業、今後の採用や定着支援に関心のある新潟県内企業を対象としています。

外国人材の採用・育成・定着に取り組む新潟県内企業に向けて、 企業事例やイベント情報、関連情報を発信するサイトです。

採用・選考プロセスについて

特定技能1号については、受け入れ人数の上限は原則として常勤職員の総数以内とされています(介護・建設分野は別途規定あり)。最小人数の制限はなく、1名からの採用が可能です。初めての受け入れは1〜2名から始め、受け入れ体制を整えながら段階的に増員するケースが多く見られます。

はい、オンライン面接が可能です。インドネシア現地での対面面接を希望される場合は、渡航手配のサポートも行っています。面接では通訳の手配も対応できますので、言語の不安なく候補者の人柄・意欲・スキルを確認していただけます。

特定技能1号の要件として、日本語能力試験N4以上(または国際交流基金日本語基礎テスト合格)が必要です。DMI経由の候補者は、インドネシアの教育施設で来日前に日本語学習を積んでおり、日常会話レベルの日本語能力を持って入国します。業種によっては、来日後も継続的な日本語学習支援が定着率の向上につながります。

渡航前の教育・育成について

受け入れ企業の業種・職種・現場環境に応じた教育内容のカスタマイズについては、BNGパートナーズを通じてDMIおよび送り出し機関と調整することが可能です。特に建設業では、足場の種類・工法・安全基準など企業ごとの違いがあるため、事前のすり合わせが重要です。詳細はお問い合わせください。

DMI(PT DAISAN MINORI INDONESIA)は、インドネシア・チカランに建設・運送業の2コースを設けています。建設コースでは、足場の実技講習・特定技能評価試験(SSW)対策・日本語教育・就労マナー講習を約6か月かけて実施します。運送業コースでは、日本式の学科・技能教育(普通一種・準中型・普通二種対応)に加え、接遇マナー・危険予知トレーニング・荷役作業の座学を行います。「来日してから覚えるのではなく、覚えてから来日する」という考え方のもと、即戦力として活躍できる人材を育成しています。

費用・契約について

外国人材の受け入れに関連する補助金・助成金として、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」などが活用できる場合があります。また、新潟県独自の支援制度についても、最新情報をお問い合わせください。助成金の活用には申請要件・タイミングがありますので、採用計画の早い段階でご相談いただくことをお勧めします。

採用にかかる費用は、送り出し機関への手数料・在留資格申請費用・渡航費・初期生活支援費用などを合わせると、1名あたり50〜100万円程度が目安となります(業種・条件により変動します)。加えて、月々の給与・社会保険料・住居費用(企業負担の場合)が発生します。活用できる補助金・助成金もありますので、費用の詳細はお問い合わせください。

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