夜勤のシフトに、悩まなくなった

interview

夜勤のシフトに、悩まなくなった

PROFILE

越後製菓株式会社(新潟県長岡市/食品製造業・米菓/餅/パック米飯/麺類)

「ふんわり名人」で知られる米菓をはじめ、切餅、パック米飯、麺類を手がける越後製菓株式会社。1946年の創業以来、製品開発から生産機械の設計・製作まで自社で行う技術力を持ち、県内に複数の工場を構えます。従業員は787名(2026年4月時点)。同社が外国人材の受入れを始めたのは2022年。現在はベトナム、インドネシア、ミャンマー、ラオス、タイ出身の51名が製造ラインを担っています。きっかけは、募集をかけても応募が来ないという現実と、とりわけ夜勤帯の人手確保の難しさでした。片貝工場の小林康弘工場長と、同工場で米菓の焼成・味付けラインを担当するミャンマー出身のキン ニン ウェイさんに、お話を伺いました。

応募が来ない。そして、夜勤帯

越後製菓が外国人材の採用を決めた理由は、二つありました。ひとつは、募集をかけても応募が来なかったこと。もうひとつは、ベテラン社員の定年退職が続いたことです。

深刻な人手不足は現場の運営に直結しました。それを補うために、間接部門の社員が製造ラインに応援に入る状態が続いていたといいます。

本来の業務を持つ社員がラインに入る。一時的な対応としては成り立っても、続けば本来の業務が滞ります。人手不足の影響は、現場の外にも広がっていました。

そのなかでも、とくに苦労したのが夜勤帯の働き手の確保でした。

食品製造の現場では、製造ラインを止めずに動かし続けることが生産量に直結します。しかし夜勤は、日中勤務に比べて希望者が集まりにくい。この時間帯をどう埋めるかは、多くの製造業が抱える共通の課題です。

外国人材の受入れを始めたのは2022年。現在は特定技能1号41名、技能実習10名の計51名が在籍しています。出身国はベトナム、インドネシア、ミャンマー、ラオス、タイ。担当するのは餅、米飯、米菓、惣菜の製造ラインです。片貝工場には、ミャンマー出身の13名が勤務しています。

ふりがな、やさしい日本語、そして相談しやすさ

教育とコミュニケーションで工夫していることを尋ねると、四つの答えが返ってきました。

掲示物には、ひらがなでふりがなをつける。簡単な日本語で、ゆっくり話す。翻訳機能付きの連絡ツールを活用する。そして、困ったことを相談しやすいよう心理的安全性を保つ。

前の三つは、伝える側の技術の話です。四つ目だけは性質が違います。相談しやすい状態をつくるというのは、仕組みではなく関係の話だからです。

製造現場では、分からないことを分からないまま進めてしまうと、製品の品質や安全に直結します。聞ける相手がいるかどうか、そして聞いても大丈夫だと思えるかどうか。この二つが揃って初めて、教える工夫が機能します。

「わかりやすく書く」が、当たり前になった

受け入れて変わったこととして、小林工場長はまず生産面での効果を挙げます。

日本人の働き手を確保しにくい夜勤帯のシフトに積極的に入り、一生懸命働いてくれる。その結果、生産性が上がり、シフト間の人員調整に悩むことが減ったといいます。

「人が増えた」ではなく「調整に悩まなくなった」。この表現に、現場の実感が表れています。シフトを埋める作業そのものが、管理職にとっては大きな負担だったということです。

そしてもうひとつ、社内の文化に関わる変化がありました。

掲示物を簡単に、分かりやすく作ることが、当たり前の文化になりつつあるのです。

外国人材のために始めた工夫が、いつのまにか全体の標準になっていく。ふりがなのついた掲示物は、日本人の新人にとっても、たまに現場に入る間接部門の社員にとっても読みやすいものです。

「まだ完全には定着していないが、そうなりつつある」という言い方に、現在進行形の変化がよく表れています。

キン ニン ウェイさん]相談したら、よく話を聞いてくれた

キン ニン ウェイさんは2022年に来日し、同年越後製菓に入社しました。片貝工場で米菓の焼成と味付けのラインを担当しています。

日本で働き始めて苦労したことを尋ねると、こう答えました。

「生活のルールなどに慣れるまでは少し苦労しましたが、工場の人に相談するとよく話を聞いて対応してくれたので、大変なことはありませんでした」

「大変なことはありませんでした」という一言は、簡単に出てくるものではありません。相談しやすい環境づくりという会社側の方針が、本人の側からはこう見えていた。工夫が機能していたことの、確かな裏づけになっています。

[キン ニン ウェイさん]特定技能2号を取って、主任や係長に

これからの目標を尋ねると、はっきりした答えが返ってきました。

「特定技能2号資格の取得をして、長く働きたいですし、主任や係長など責任ある役割にも挑戦したいです」

入社から4年。現場で経験を積んできた方が、その先に主任や係長を見据えている。資格の取得が目的ではなく、社内でのキャリアを前提として語られていることに注目したいところです。

【解説】特定技能2号 ― 期間の上限なく働き続けられる在留資格

特定技能2号は、特定技能1号の上位に位置づけられる在留資格です。1号との最大の違いは、在留期間の更新に回数の上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も認められる点にあります。長期にわたって日本で働き、生活の基盤を築いていくことができます。

飲食料品製造業分野でも2号への移行が可能です。移行には、より高度な技能評価試験の合格に加え、複数の作業員を指導しながら現場を管理した実務経験が求められます。指示を受けて作業する立場から、現場をまとめる立場へ。役割の変化そのものが要件になっているということです。

キンさんが語る「主任や係長」は、越後製菓における正式な役職です。現場をまとめる役割を担うことが、そのまま2号取得への道筋になっていきます。

資格取得の費用を、会社が援助する

越後製菓は、特定技能2号の資格取得を会社として支援しています。具体的には、資格取得にかかる費用の援助です。

さらに、オンライン講習の時間確保や、その費用の援助についても検討を進めているといいます。

試験の費用を出すことと、勉強する時間を勤務のなかで確保することは、会社にとって性質の異なる負担です。後者にまで踏み込もうとしているところに、支援の本気度が表れています。

そして、その先も描かれています。特定技能2号の資格取得者には、リーダー職への昇格も視野に入れて検討していきたいというのが会社の方針です。

キンさんが語った「主任や係長など責任ある役割にも挑戦したい」という目標と、会社の方針は同じ方向を向いています。本人の希望と会社の方針が噛み合っているとき、資格取得は個人の努力だけの話ではなくなります。

4年でつくられたもの

越後製菓の受入れは2022年に始まり、4年目を迎えました。この間に起きたことを整理すると、三つになります。

ひとつめは、夜勤帯という最も埋めにくかったシフトが埋まり、人員調整に悩む時間が減ったこと。ふたつめは、ふりがなややさしい日本語といった工夫が、外国人材のためだけでなく職場全体の標準になりつつあること。そして三つめが、主任や係長といった責任ある役割を見据える人材が育っていることです。

人手不足への対応として始まった受入れが、職場の伝え方を変え、次の担い手を生んでいく。4年という時間は、決して長くありません。

COMPANY PROFILE

越後製菓株式会社

エリア

新潟県長岡市呉服町1丁目4番地5(本社)

業種

食品製造業(米菓・餅・パック米飯・麺・惣菜の製造)

創業

1946年

従業員数

787名(2026年4月時点)

事業内容

米菓(ふんわり名人 等)、鏡餅・切餅・丸餅、パック米飯(越後のごはん)、麺・惣菜の製造販売。米菓業界大手。製品開発から生産機械の設計・製作まで自社で行う技術力を持つ。県内に複数工場(長岡市、小千谷市)

外国人材の受入

51名(特定技能1号41名/技能実習10名)※うち片貝工場 特定技能1号13名 出身国:ベトナム・インドネシア・ミャンマー・ラオス・タイ(片貝工場13名はミャンマー出身) 受入開始:2022年 担当業務:製造ライン(餅・米飯・米菓・総菜)

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